毎年、暑い時期になるとみなさん気になるのは「熱中症」だと思います。さまざまな熱中症予防がありますが、中でも今回は、水分補給や食事でできる熱中症予防についてご紹介していきたいと思います。。目次・熱中症とは?脱水状態で運動パフォーマンスは低下する?・熱中症対策に「水分補給」はなぜ必要?・キーワードは「バランスの良い食事」・まとめ熱中症とは?脱水状態で運動パフォーマンスは低下する?熱中症とは「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」1)のこと。すなわち、「暑熱(暑さ)による諸症状を呈するもの」の中で、他の原因(感染症や持病など)となる疾患を除外したものを熱中症といいます。脱水症状による熱中症のリスクまた、暑熱環境では、脱水状態になりやすく、脱水状態は熱中症のリスクを高めます。脱水状態は熱中症を高めるだけでなく、運動中に失われる水分量が2%を超えると、有酸素能力が10〜20%低下するという報告もあります。2)これは運動パフォーマンスに大きな影響を及ぼすため、特に注意が必要です。暑熱環境下では、少しでも体調に違和感を感じたら、無理せずしっかりと涼しいところに避難をしたり、水分補給をしたり、休息をしましょう!熱中症対策に「水分補給」はなぜ必要? 3) 4)体表での体温調節暑熱環境にいるだけで、私たちの身体は皮膚にこもった熱を放出しようと、皮膚の血管を拡張して、多くの血液を皮膚下(体表)に送ることにより温度を調節(体温調節)をします。この身体の機能により、一時的に血液の量(循環量)が減少します。身体の血液が減少すると、血圧の低下や脳への血流が減少し、めまいなどの症状を引き起こします。脱水症状長時間の運動によって大量の汗をかくことはよくあります。汗は血液から作られており、水分だけでなく電解質も含まれています。電解質にはナトリウム(塩分)が含まれているため、これを補給しないと筋肉がつることや熱けいれんを引き起こす可能性があります。「体表での体温調整」や「発汗による脱水状態」が重なると、熱を運び出す血液が減少し、効率よく熱を外に逃がすことができなくなってしまいます。そのため、こまめに水分を補給することが非常に重要です。最近の報告によると、水分補給をした場合、しない場合に比べて体温調節プロセスが改善されることがわかっています 2)。水分補給は単に水を飲むだけでなく、電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)が含まれているスポーツドリンクを選ぶことをお勧めします。これにより、失われた電解質を効果的に補給することができます。また、「喉が渇いた」と感じる前にこまめに水分補給を心がけることが重要です。喉が渇いていなくても定期的に水分を摂ることで、脱水症状を防ぐことができます。ただし、利尿作用のあるコーヒーや緑茶などカフェインを多く含む飲み物は、脱水を助長するため運動前などには避けた方が良いでしょう。キーワードは「バランスの良い食事」水分摂取だけではなく、日々の食事にも気を配ることが重要です。近年、男子大学生アスリートを対象に発表された研究によると、回答者237名のうち約半数が労作熱中症 (EHI)※ を経験したことがあることがわかりました。また、主食、主菜、副菜を含むバランスの取れた食事を3食摂取することが、2食摂取した場合と比較してEHIの発症率が低下することが報告されました。5)この結果からも、水分補給だけではなく、日頃からバランスの良い食事を摂ることが熱中症を予防し、運動パフォーマンスの低下を防ぐためには重要であることがわかります。※労作性熱中症(EHI :exerional heat illness ) :労働やスポーツによって生じる熱中症のことまとめ今回は、睡眠や休息については触れていませんが、よく寝ることももちろんとても大切です。しっかりと睡眠、休息をとることも心がけましょう。猛暑が続く季節ですが喉が乾いてなくても水分を補給する食事もしっかりと食べるこの2つを意識して、夏バテには注意しながら、最大限のパフォーマンスを常に発揮できるようにしていきましょう!参考文献1) 熱中症診断ガイドライン , 日本救急医学会,20152) Tomasz Pałka et al .: Effect of Various Hydration Strategies on Work Intensity and Selected Physiological Indices in Young Male Athletes during Prolonged Physical Exercise at High Ambient Temperatures , J. Clin. Med , 2024 , 13(4) : 9823) スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック, JSPO日本スポーツ協会,20194) 熱中症はどのようにして起こるのか,環境省熱中症予防サイト5) Max Hirshkowitz et al .: Association between the experience of exertional heat illness (EHI) and living conditions of collegiate student athletes , Drug Discoveries & Therapeutics ,2024,18(1) : 60-66